チョコレートファウンテン2/4
店の中に足を踏み入れた。
明るい外から室内に入ると、なおさら店内が暗く感じる。
暗さも関係あるのだろうか、あたかもそこは
昭和初期にタイムスリップしたような空間であった。
ガラス越しに外から見えた、山積みパンの向かいの棚には、
もってけ泥棒!価格のパンが袋ぎゅうぎゅうに詰められ、所狭しと並んでいた。
どうやらセール品らしい。
目立つように赤字で、黄色の短冊紙に「セール価格!」と書いてある。
にじんでいながらもマジックペンの赤と、黄色のコントラストがまぶしい。
袋に貼られた値札のシールは、
よくバザー品などに貼られる、縦1㎝×横2㎝位の長方形の、あのシールであった。
外枠に赤い二重線が入っているやつ。
パンが
所定の許容量を超えて並べられ、客に迫ってきている感じが
バザー感とあいまって、他店の追随を許さない、独特の雰囲気を醸し出していた。
こういう雰囲気、nにはツボである。
nは、子どもたちから
ホットドッグが食べたいとリクエストされていたことを思い出し、
コッペパンとロールパンを買った。
年季の入ったレジと、それを打つ店主の手を見ながら
このパン屋さんはいつ頃からあるのかしら…とおもった。
会計を終えて店を出ようとすると、店主から呼び止められた。
「今日から試運転の、チョコレートファウンテンがあるんですよ。」
手を差し向けた先には、なるほど
小型のチョコレートファウンテンがあった。
結婚式場やホテル、レストランなどで見かける
液状になったチョコが噴水のように流れ出して循環している、あれである。
昭和な空間に今風のアイテム、かなり違和感がある…
店の奥からスタッフの方が
竹ひごに刺した、星型やらハート型のマシュマロや、ミニドーナッツを
お皿に並べて持ってきた。
「どうぞ。ぜひ召し上がっていってくださいな。」
アンチ甘党のn、さあ、どうする?