えんずいの生徒さん5/6
先週のおさらいは、こちら。
「先生~せんせーい!!」
「?!」
「Mです!覚えてますか?」
「うわぁ〜M君じゃない!こんなところで会うなんて。」
(スポーツウェアを着た母を見て)
「先生は、体育も教えてるんですか?」
「ちがうちがう。これは私の趣味だよ。
あれから何年も経っているのに、よく分かったね。覚えていてくれたんだね。」
「もちろん覚えてますよ。国語辞典の引き方、教えてくれたんすよね。」
「そうだったね…。今は、働いているんだね。」
「ハイ。トラックで営業してます。これから得意先を回る所で。
自分、最近結婚したんすよ。これ、嫁さんです。子どもも一人います。」
奥さんとお子さんの写真をポケットから大事そうに取り出して
見せてくれた。
「頑張っているんだね。」
「ハイ。」
信号が変わった。
M君はペコっと頭を下げて、トラックに戻っていった。
ひとまずは高校を受験し、進学することにしたのだそう。
高校を無事卒業した後、今の運送会社に就職し、奥様とご結婚。
お子さんも生まれ、今まさに
順風満帆の人生を送っているようであった。
そう、M君は立派な大人になっていた。
えんずいの生徒さん4/6
M君との個人授業が終了し、数年が経ったある日のこと。
いつものように、nの母は
スポーツジムに行く道を急いでいた。
点滅する信号を、フルスピードの自転車で
なんとか渡り切る。
ほっとしていると、
背後のど派手なトラックの運転手から
クラクションを鳴らされた。
一回ではない。
しつこく鳴らしている。やがて
側道に派手派手トラックを寄せて、接近してきたではないか。
母は身構える。
「信号無視はしてないけれど、交通ルールを正しく守ったとは言えない…。」
運転手は窓を開ける。
身を乗り出し、両腕を伸ばしながら何かを叫んでいる。
注意される…と母は覚悟した。
えんずいの生徒さん3/6
あるとき、国語辞典の引き方を教えたことがあったそうな。
初めて国語辞典なるものの存在と、
その使い方を知って
とっても喜んでいたM君。
「これで、新しい言葉が出てきたら分かるんだ…。」
母は、当時小学生だったnに
Mくんのことを時々話していたように思う。
「うちに使ってない国語辞典と漢和辞典があったでしょう。
あれ、M君にあげていいかな?」
「うん、いいよ。」
こんなやり取りを
おぼろげながら覚えている。
学習塾は、2月か3月から新学期となる所が多い。
2月末でその年度の学習は終了し、3月から新学年でスタートする。
母の勤めていた塾もそうだった。
しかしMくんの場合は、特別措置がとられ
中学三年の3月末まで教えた。高校受験は、しなかった。
中学を卒業したら学習塾も辞めてしまったので
M君の進路は分からなかった。
しかし数年後
思わぬ時に、思わぬところで母は
M君のその後を知る。
えんずいの生徒さん2/6
その生徒さんは、M君といった。
ものの名前は理解しているけれど、
抽象的なものの理解が難しいようだった。
例えば、
「円滑 えんかつ」という言葉を学ぶにも、
目で見て、手に取って分かる具体物ではないので
イメージが沸かない。
よってなかなか覚えられなかったという。
おまけに「えんずい」とインプットされてしまったようで。
母は授業の最後にこう聞く。
「じゃあ最後に、今日習った言葉を復習してみましょう。
ものごとが止まったり邪魔されたりしないで、
なめらかに進むことを、何と言ったかな?」
「えんずい! … あっ。」
「えん」までは合っているのに、
「かつ」が「ずい」にすり変わってしまうこのプロセスに、いったい何があるのか…。
教授法に問題があると考えていたnの母は、ある日
TVでアントニオ猪木を見たそうな。
猪木氏の編み出した必殺技が
「えんずい斬り」であることを知った。
教わる側だけでなく
教える側にも日々発見があった模様。
えんずいの生徒さん1/6
nの母はおよそ20年間、学習塾の講師をしていた。
国語と数学を教えていた。
あるとき
一人の生徒さんが入塾してきたそうな。
その学習塾は少人数制を謳っていたが、生徒さんのお母様は
個人授業を強く希望していた。
「うちの子は、少人数のクラスでも難しいと思います。」
その生徒さんは
耳のあまり聞こえない祖母に育てられたという。
山奥の人里はなれた村で
祖母とふたりっきり。ほぼ無音の世界で成長した。
家庭で言葉を聞く機会が少なかったため、言語の習得が
遅れていたのであった。
事情があって両親とは一緒に住んでおらず
月に数回、母親が自宅に連れて帰り
一緒に過ごすこともあったという。
それでも
同年代の子達と比べると言葉は遅れがちであった。
その生徒さんは、中学二年生。
男の子であった。
数学や英語の成績は、
あまり問題は無かったようだが
国語の成績は、ずば抜けて問題アリだった。
塾長さんは
個人授業を引き受けてくれるかどうか、nの母に打診した。
「かなり難しいケースです。
学校の成績うんぬん以前に、基本的な言語の習得、理解を促すことから入ってください。」
nの母は、悩んだ。
悩んだ末、引き受けた。
女子トイレに、男性あらわる!2/2
前回、臨時に使わせてもらっている
階下の女子トイレで、
先輩が男性に出くわしたことを書きました。
neillot.hatenablog.com
わが社では大騒ぎ(ごく局地的)になったわけですが
それからというもの
私たちは、最短&最速でトイレを済ませています。
お化粧を直したり、髪を整えたり、ストレッチをしたり、ぼんやり考えごとをしたり…は、省略。
トイレでのアクティビティーは、本来の目的のみ、に絞りました。
その後
「洋式トイレの方から出てくるところを見た。」
「スマホにピンクのふわふわファーを付けている。」(これ、どうやって知ったのか、知りたい。)
などの目撃情報が寄せられました。
オトメ系の男性が女子トイレを使っている―
という仮定で落ち着いたわが社の女子部ですが、果たしてそうなのでしょうか…。
nは、
オトメ系の男性というより
オストメイトの男性なのでは…と思っています。