住宅街で遭難2/3
歩き始めて30分ほど経った頃だろうか、雪が暴徒化してきた。
空からはらはらと静かに舞い降りる、初期のおとなしい様相を超えて
nの進行方向へ刃向かう荒くれ者の様相に豹変した。
もはや傘は、さすことをせず前方に突き出し
足元に注意しながらソロソロと歩く。
道のりの半分まで来たところで、なんだか眠くなってきた。頭がぼおーっとしてきて、耐えがたい眠気に襲われた。
歩いている(身体を動かしている)のに、どうして眠くなるのかな。
私は雪山の遭難者なのだろうか。ここは、アルプスかヒマラヤか。
はたまたエベレストの山上か。
…いいえ。会社と家の中間地点です。海抜30メートルの住宅街です。
nのほっぺを叩いて「ダメだ!寝るな!」と揺り起こしてくれる同僚は、いなかった(同僚は自宅でテレワーク中)。
周期的に襲ってくる眠気と闘いながら、ガードレールにつかまり、立って休む(寝る的な?)動作を挟みつつ、ヨレヨレになって家へたどり着いた。
普段なら45分で歩けるところを、およそ一時間半もかかった。
雪が降っていたとはいえ、いつも通る知っている道なのに。わりと平坦な道なのに。
自分の体力に対する自信が、揺らいだ。
自分は途中、神隠しにでもあってしまったのだろうか。
覚えている限り、神からは隠されていないと
おもう。