住宅街で遭難1/3
先週nの住む地域で雪が降った。
普段はテレワークだがその日は出勤日であった。
雪道は危ないので、いつもの自転車通勤はせず徒歩で会社へ向かう。
午後になって上司から「今日は雪が降り積もる予報だから、早めに帰った方が良い。」と言われ、一時間早く帰宅した。
会社のドアを開けると、ちらほらと粉雪が舞っていた。
灰色の重たい空から、粉つぶのような丸い雪がはらはらと落ちてくる。
つぶ粉は、遠くの街路樹の頭のてっぺんを下へ下へと白色に染めていた。
「クリスマスのもみの木みたい…」
歩き始めて15分ぐらい経つと、雪が本格的になってきた。
その日のnはいつにも増して防寒対策を万全にしていた。
ヒートテックの下着を着込み、つま先と腰にホッカイロを貼り、長靴、スキー用手袋、毛糸のマフラーとニット帽を装着。まことに重装備である。
お陰で雪中を歩き続けても寒くなかった。
むしろホカホカと温かくなってきた。
雪はどんどん激しくなる。
「今日はいつもより一時間早く家を出たので、帰宅が一時間早まっても、プラマイゼロだな。」
普段は自転車で軽快にシャーっと通り過ぎる道も、雪の道となると
ものすごく遠く感じた。