neillot’s diary

サラリーマンで三児の母の、はちゃめちゃ感あふれる日常

ひで伯母さん3/3

当時の母は、シャネルのスーツを家着としていた。

 

オートクチュールのスーツが普段着になりうるような家庭ではない。

豪華とは縁のない、どちらかというと質素な家庭だった。

 

母はシャネルスーツの上から、地元スーパー2階の衣料部で買い求めた

「今月のマル秘!お買い得商品 エプロン@789円!」をしめていた。

 

 

スーツは、ひで伯母さんのものだった。

 

チンケなエプロンとの組み合わせでは

ひで伯母さんだけでなく、ココ・シャネルも泣くだろう。

 

 

何故、母は室内だけでスーツを着ていたのか?

 

母のサイズのどこ一つとっても、

全然フィットしていなかったからである。

 

「スーツの上下とも入るのだけど、すべての丈が短いわ。変な所が余ったりして…。」

 

 要は、つんつるてんでブカブカだった。

 

ひで伯母さんは、小柄で全体的にまろやかな感じの方だった。

 

 

着心地の悪いスーツでも

シャネルということで無理矢理にでも着ているのでは?

 

nは邪推していた。

 

 

女兄弟のいない、nの母。

帰省した折には、暇さえあればひで伯母さんと話し込んでいた。

今思うと、子どもは入りこめない大人の女性の話をしていたように思う。

 

おしゃべりはいつも決まって長かった。 

 

 

「故人の物は、使ってあげることが一番の供養なんだよ。

ひでちゃんを思い出すことができるから。」

 

nは邪推した自分を恥じた。

 

 

もうすぐ

ひで伯母さんの命日である。

ひで伯母さん2/3

ひで伯母さんには、子供が二人いる。

 

nのいとこだ。

そのうちの一人が結婚した。数年前である。

 

お相手の方は、明るく朗らかそうな女性であった。

結婚式の写真を見ての第一印象である。

 

 

以来、何かの折に帰省した際には、いとこのお嫁さんに会う。

お食事したり、お茶を飲んだり、おしゃべりしたり。

 

今夏も、会ってきた。

ぱあっと明るい、ヒマワリのような人。

 

 

よく笑う。

 

つぶあんが嫌いで、こしあんが好きだという彼女。

 

ひで伯母さんも 甘いものには目がなかった。

 

いとこのお嫁さんは、

nの記憶の中のひで伯母さんと幾重にも重なる。

ひで伯母さん1/3

nが小さかった頃。
夏休みは、母方の祖父母の家に遊びに行っていた。


そこには祖父母の他に
母の兄である伯父と、ひで伯母さんがいた。
nと歳の近い、いとこもいた。


ひで伯母さんは
いとこより3歳年下のnを、可愛がってくれたように思う。

「nちゃんを見てると、娘の3年前を思い出すわ…。
ちょうどこんな風だったなぁ。」



ヒマワリのように明るい人だった。


親戚家族がみな帰った後も、私達だけは
ひで伯母さんの家に居座っていた。

nが「もっといたい!」とリクエストしたのか、
実家でゆっくりしたいnの母が「もう少しいてもいい?」とnの祖母にお願いしたのか。

毎夏、一週間は泊まっていたと思う。


ひで伯母さんは、働いていた。

まだまだ夏休みを満喫している私達家族がのっそり朝ごはんを食べていると、
夏休みの終わったひで伯母さんは、シャネルのスーツに身を包み
颯爽と会社へ出かけて行った。

「nちゃんたち、ゆっくりしてってね。じゃ、いってきます!」


お盆が終わり会社が始まってからも、なおも居続ける
義理妹の家族。


どう思っていたのだろう。


当時子供だったnは、知る由もない。

現在は、知る術もない。

ティーンネージャーに告ぐ

夏である。

 

家の窓を開けっぱなしにする機会が増える。

集合住宅では、夏になるとご近所さんの声が聞こえやすくなる。

 

休日の午後。

廊下に近い部屋で洋服の整理をしていたn。

 

バタン!と乱暴に閉まるドアの音を聞いた。

うちか?

違う、上の階からだ。

 

「人をこき使って!!」という泣き声とも叫び声ともつかない怒りに震えた声。

 

子どもの声である。女の子だ。

 

父親と母親をものすごい言葉で罵っている。

ドンドンドン!!

ドアを叩いている。

ちがうな、足で蹴っとばしている。

 

母親が冷静に注意しているが、聞いちゃいない。

捨てゼリフを叫んで、出て行ったようだ。怒りの足音が、廊下に響く。

 

 

反抗期。

我が家の長女も、あと数年で迎えるだろう。

 

ティーンネージャーよ。

 

理不尽なこと、矛盾していること、おかしなことは世の中、沢山あるだろう。

 

それらを鋭く突きなさい。

そして、どんどん反抗なさい。

 

そうして、親を、大人を、乗り越えよ。

 

あなた達は、幸せなことに

反抗できる状況にあり、反抗する対象もいます。

 

 

nは

反抗できる機会も対象も無いまま大きくなった大人を

 

知っている。

ひみつにしてても言ってしまう

「いくよぉ。せーの、せぇーで!ゴぉ~ン!!」

「いやっ、え? ん?? ん~っ??」

「その件につきましては、これから配る資料を・・・」

 

 

旦那さんの寝言である。

なかなかに聞き取れる位、はっきりした口調で言う。

 

寝言には返事をしてはいけない、と聞いたことがあったので

じいっと耳を傾ける。

 

誰かとお寺の鐘を突いている

何かにやたらといぶかしんでいる

仕事でプレゼンをしている 場面かな。

 

 

旦那さんが寝言を言う時は、こんな時だ。

 

仕事が忙しい時、

ストレスやプレッシャーが重くのしかかってきた時、

寝返りを打つ時。

 

10年目の妻は、いよいよ傾向を掴む。

 

 

秘密にしたいこと、ヤマシイことも、

まことに残念ながら(!)寝言でバレてしまいます。

 

内緒にしていたことも、夜中に無意識のうちに激白しちゃう、

という本人にとっては恐ろしいクセ。

 

 

妻にとっては、とても好都合なクセです。

ハサミと詠嘆

学校から配られたプリント、

夏休みの課題「読書感そう文 ようこう」がない。

数日前から、家の中を必死に探している。

 

大物の宿題をお盆以降に持ち越すと、

月末が大変なことになるので早めに取りかかりたいところ。

 

ありとあらゆる怪しい所を、探す。

あせって探す。

だから余計に見つからない。

 

要綱プリントも、こつ然組だろうか…。

(こつ然組とは、こちらで定義いたしました。) 

neillot.hatenablog.com

 

もしや、この残骸か??

床に散らばる、薄黄緑色の紙切れ。

原形をとどめず、無惨にも粉々に切り刻まれている。

 

多分これだ…。

感想文ようこうは、薄黄緑色のプリントだった。

 

ハサミが使えるようになった次男のしわざです。

 

やってしもうた。

非常に大事な紙を、やってしもうた。

親の管理ミスである。

 

 

修復できないサイズに切れ切れに割け、

回収できない範囲に散っている。

 

「大海の 磯もとどろに 寄する波  割れて砕けて 裂けて散るかも」

By 源実朝

 

「狭宅の いともそぞろに 消える紙  割れて砕けて 裂けて散るかも」

By 詠み人知らず

 

 

お友だちのママに、要項の内容を聞かねば…。

ハサミ

保育園にて。
次男のクラスで、ハサミを本格的に使い始めたよう。

ざくざくと切れていく様が楽しいみたいで、
次男
夢中になって切っている。


何でも切れる、魅惑のハサミ。
自分が働きかけることによって、姿形が変わる。


応答性のある面白さに、彼の興味は尽きないようだ。



お家では
「Kちゃんはまだ危ないからだめだよ。」
「赤ちゃんのKちゃんは、使わないよ。」

と姉兄から止められて、使わせてもらえません。

母親のnも、使わせていません。
完璧に目を行き届かせる自信がないからです。


しかし、保育園でハサミを使っていることを知り
このたびお家でも解禁しました。


次男、切ります、切ります。

チラシ、新聞紙、折り紙、
学校の要らなくなったプリント類。


最近はキッチンばさみにも範囲を広げてきました。


手でちぎれますが 海苔、
包丁で切りたいのに 薄焼き卵、
ちょっと無理めの円柱形 かっぱ細巻き、を

チョキチョキ、チョキチョキ。チョッキン!



当時の長女のように
新品のお洋服の裾、テーブルクロス、自分のもみあげ

や、

当時の長男のように
手芸用メジャー、支払い請求書、自分の横髪


を切り飛ばすよりは、ずっといい。