甚だしき加害妄想1/2
入浴中。
長女が浴槽の縁に腰掛け、物思いに沈んでいる。
うつむき加減で、体を洗う手が止まった。
みるみる顔が曇り、ぽろぽろと涙をこぼした。
どうしたの?と心配する母の声を聞くと、
3・2・1…(カウントダウンです)
「うわーん!!」
息急き切ったように泣き出した。
三秒溜めてから泣く、という流れは
赤ちゃんの頃からの不変の真理である。
泣きが収まるまでは、
なんで泣いているかの理由は聞けない。
ひとしきり泣かないと、質問にも答えられないからだ。
号泣中は何も聞こえないのである。
乙女心は複雑だな、と母は思った。
ふと
突然相手に泣かれるも理由が聞けないで困っている
長女の将来の彼氏を、母は想った。
自分とは違う性の、
自分とは異なる反応の仕方を称して
男性は、
”乙女心は複雑だ…”とまとめ、理解しようとする。
そこには
若干の面倒くささも伴う。
母とて同じ。