ときめきのないイリュージョン
nの住む地域の冬は
比較的晴れた日が多い代わりに、空気が大変乾燥する。
とある天気の良い週末、掛け布団を干した。
ポリエステル生地のふわふわ布団を、身長より高い物干し竿に
よいこらしょ、っと掛ける。少し重めなので、自分自身への掛け声つきである。
掛けたら竿の下へまわり、二つに折りに干された布団の間に入って
布団の形を整えた。
すると…
ポリエステル生地に発生した静電気により、nの髪の毛が
人知を超えた未知の力によって操られているが如く、四方八方に散らばった。
因みにnの髪の長さは、肩下くらい。
さながら超能力発揮中の、怨念に燃えない貞子のようである。
空気の乾燥を毛髪に発生する静電気量で知る冬の朝、
ときめきのないイリュージョンを見た。