謎のお屋敷1/3
近所に謎のお屋敷がある。
周辺の家々とは明らかに違う雰囲気で佇み、
そこだけが異空間であった。
「なんだろう、あの家は?」
前を通るたびに、興味をそそられた。
次男の産休中のことである。
そのお屋敷は、妊婦健診を受けに行く道の途中にあった。
茅葺き屋根が、格調高い。
高い外塀は、竹。黒い紐で、隙き間なく編まれている。
外塀の上から笹の葉らしき緑がちらっと見える。
雨戸はいつも閉じていた。
布団や洗濯物、マット類などの生活アイテムが干されていることは、
一度も無かった。
「もしかしたら別荘かもしれない。」
でもこんなベタな地区に建てるだろうか。
憶測の域を出ない想像は、謎に包まれむくむくと膨らんでいった。