最後の住人
先日の出勤日。
取り壊しが決まった団地の中を通った。
工事はだいぶ進んでいた。
機材やら廃材やらが団地内の道のあちこちに置かれ、
じきにここも通れなくなるだろう、ということが窺い知れた。
ベテランの清掃員のおじいさんは、いなかった。
そういえば、前回も前々回も見かけなかった。
解体作業が急ピッチで進む団地に、
まだ最後の住人は住み続けているのだろうか…
おじいさんが様子を見に来ていない
ということは、
とうとう諦めて引っ越していったのだろうか。
おじいさんが教えてくれた棟の最上階を見る。
…
洗濯物が干してある!
まだ住んではる!
…
この建物に電気やガスは、果たして通っているのだろうか。洗濯ができるということは、水道は止まってないのだろう。
元清掃員のおじいさんが来なくなった今
団地内の道が通行止めになるまで
通勤途中の私が、最後の住人を見届けよう…
という、勝手なミッションを己に課す…。