くちびるでロールシャッハ
その日は冷たい雨が降っていた。
二重跳びができない長男は、
この長い春休みにマスターしようと(nに課題を出されて)練習することになった。
雨の日だって練習は可能である。
マンションのエントランスに若干のスペースがあって
そこで練習できるのである。
だれも通らなそうな時間帯を選び、早速
二重跳びの練習を開始。
とはいっても子供の集中力なんて、そう長くはもたない。
おなじく縄跳びをしていた次男と長女と早くも遊び始めた。
コロナウィルスの影響でこのほど外遊びが足りない子供達である、
遊びはすぐさまエスカレートした。
長男はエントランスのガラスに、ぶちゅーと唇をつけて
ふざける。
「見て見て!なめくじ!なめくじ!」
次男と長女は、ガラスの反対側にまわり「うわー!きもい。」
最高潮にはしゃぐ声が玄関ホールに共鳴する。
息でガラスが曇る。
なめくじ周りには、白い模様が浮かび上がった。
ロールシャッハテストのような?
翌日は晴れて暖かであった。
昨日消えたはずのロールシャッハが、
ガラスの低い位置で浮き上がっている。
我がマンションのエントランスガラスに限らず
新幹線や飛行機の窓、
ピカピカに磨かれた博物館やホテルのガラス面などでもお見かけする。
いずれも低いところに出現するロールシャッハならば
子どもの仕業であることが、一発で知れよう。