脳梗塞で倒れたとき、妻は…4/4
「膀胱のここの部分が膨らんでいるのが分かると思います。泌尿器科の先生が癌の印象です、と診断しているんですね。」
レーザーポインターで
患部の周りをぐるぐると指し示しながら担当医が言った。
きましたね…いやな予感は的中しましたね…。
でも余命三か月とは言ってないぞ…。
nはレーザーの赤い光を眺めながら
このレーザーポインター、前々の上司が社内企画会議で使ってたのと同じやつじゃないか…と別のことを考えていた。
一方の母は、静かに泣いていた。マスクが涙でぬれている。
濡らしているのは、鼻水かも知れない。
いつの間にか車椅子で連れて来られていた父は、
「ほほーう。ここなんですねぇ。」とうなづいていた。まるで他人事のようである。
反応は三人三様であった。
TVや映画の
ドラマチックな演出によるガン告知のワンシーンのように
悲劇の形相で泣き崩れた人物は我が家に一人もいなかったけれど、
聞いてすぐに涙が溢れ出るのは、妻の役回りなのだろう。。。
娘は、しょせん妻とは反応が違うものだ。
前々職の上司のことを
思い浮かべていたのだから。。。