11月
第一週
長いこと気になっているおもちゃがあった。
それは夏の終わりから、近所の駐車場にずっと落ちていた。
つまりは誰かさんの忘れ物であった。
長男は下校途中に持ち主が取りに来たかどうか、
次男は降園途中にまだあるかどうか、チェックしていた。
「もらっちゃダメかなぁ?」
「ぼくたちのじゃないよ。」
「でも、ずうっとこのままだったら?」
長い間忘れ物の存在を確かめているうちに、だんだんと“自分たちの物”
という意識が芽生え始めてきたよう。
nは提案した。
「今度の土日を過ぎてもまだあったら…考えてみようか。」
提案しておきながら3,4回の週末が過ぎ11月。
小雨の降る日、次男と気になる忘れ物を見にいった。
そのおもちゃは、相変わらず同じ場所にあった。
「雨にぬれてるね・・・。」と次男。
nは決める。
「よし、今日から私たちが新しい持ち主になろう。
見つけてから三か月経ったし、もう取りに来ないと思う!」
眺め続けたあのおもちゃが、とうとう自分たちの物になった!
ネコババしてきたおもちゃで楽しく遊ぶ
わが子供たち…。
第二週
長男次男がかかった溶連菌の追跡検査があって、小児科を受診した。
しれっと頂いたおもちゃと同じものが、なんと小児科の診察室にも
置いてある。
次男が小児科の先生に聞く。
「せんせいもちゅうしゃじょうで拾ったの?」
…
先生はちゃんと買われたと思います。
第三週
ヘアドネーション。
ちょうど一年前の今月、2年がかりで伸ばした髪を切って寄付した。
苦労して伸ばしたというより、
美容院に行けないうちに勝手に伸びただけであった。
あと一年待てば、また寄附できる長さまで伸びるであろう。
第四週
美容院を予約した。
「短くカットしちゃうんですか?」
担当の美容師さんは、やんわりと難色を示した。
鋏を構えながら、
「いいんですか?いいんですよね、じゃあ切りますよ。」
と念押しの確認をすること、3回。
「まずはセミロングくらいの長さにカットしてから、様子みて
短くしていくこともできますよ。」
ショートにしようとするnを、何とかして
阻止したいらしい。
長髪をバッサリ切ることに抵抗があるのか。
美容師という職業に矛盾しているのではないだろうか。
鋏で始めにじょきっとカットをする時、「ああ。」と
残念そうな小声をもらした。
担当の美容師さんは、男性です。
職業上、女性の長い髪には
理想と、こだわりと、思い入れもあるでしょうが、
当の女性は、未練なんぞさらさらございません。