常務に問う 「黒のトロンボーン」3/5
U常務を百貨店のエスカレーターで見かけた翌日。
会社でいつのように朝の郵便物の仕分けをしていたら、
隣に常務がやってきました。
「これ、出しといてね。」
ハガキに切手を貼って
普通郵便で出しておけばよい。
nは素直に
はい分かりました、で会話を終わらせばよい。
それなのに余計なことを言ってしまう。
「昨晩、常務をお見かけしましたよ。」
「えっ?ど、どこで?」
「○○百貨店の付近です。」
「あぁ~なぁんだ、そこね。ハッハッハッ…。
昨日は人と会う約束をしててね…。男性とね、男性。」
「なるほど、そうだったのですね。」
「声をかけてくれれば良かったのに。」
「とんでもないです…ご迷惑かと思いまして…。」
「約束していた人は、男性だからね。男性。」
「は、はい。。。」
(もちろん常務は、nが真後ろにいたことを知らない。)
「いゃあ、お得意さんでね、男性の。ハハハハ…。」
郵便物の仕分けをする作業台は、オフィスの中央にありました。
ここで立ち話をすると、全社員にもれなく聞こえます。
なので
nは小声で、常務の耳元にささやいたわけですが、
常務の声は、いつにもまして大きかったのです。
「声はやたらと大きいし、会ってた人の性別を何度も強調するなんて…U常務はあやしくないか?」
とnはおもった。