骨折を嬉しがる母2/2
妹はどこへでも歩いて行こうとする。
歩ける距離ではなさそうな場所へ、徒歩で行ってみようとする。
昔から歩くことが好きだったわけではない。
徒歩愛好家になったのは、ごく最近であった。
というのも
一念発起してスポーツジムに通い始めたら、次第に筋力がアップし
ちょっと体力に自信がついたから、
ちょっと健康的に痩せたから、というような経緯があるらしかった。
徒歩に挑戦する妹を心配して
気候の厳しい時、また体調が思わしくない時は、無理して歩くべきではないのに…
と母はnにこぼしていた。
次第にスポーティーに進化していった妹は、徒歩では飽き足らず、
走り出すことを覚えた。
そしてある時、一人でマラソン大会に出場した。
そして走っている途中に気分が悪くなり、棄権した。
母は、この時が忠告の絶好のチャンスと思ったらしく、妹の過信を諫めた。
「この歳になってね、成人してずいぶん経つ子どもに
いちいち日常生活の行動を注意するのも、過干渉かなぁと思ったけれど。
20代の頃の体力とは違うのだから、自分の健康状態とよく相談するように、
って言ったのよ。…でも聞く耳持たなかったねぇ。」
そんな矢先の骨折であった。
悪い方向への予想が的中して、ちょっと得意げに嬉しがる気持ちも
人間の心理として
分からなくは ない。