えんずいの生徒さん6/6
M君と別れた後
母はスポーツジムに向かって、また自転車をこぎ出した。
こぎこぎしているうちに、進めなくなった。
前が見えないのである。
「高校受験したんだ。そして無事に卒業したんだ。仕事に就いて真面目に働いている。
家族を養い、おまけに父親になって…。
えんずいのM君が、あんなに立派な青年になって…。」
M君と話している時とは違った感情が沸き起こった。
ジムに着くが早いか
トイレに駆け込み、一人泣いたという。
誰もいないことをいいことに、声をあげて泣いたという。
「あれからM君は、人一倍努力したんだなと思うとね…。ほんとうに立派だよ。」
母はまるで昨日の出来事のように、涙ぐみながらnに話してくれたのでした。
塾講師という母の、職業人生のハイライトだったと。
現在nは長男の小学校入学を前に
仕事をどうするか?という悩みが最高潮に達している。
母がしてくれたこの話の真意は、分からない・・・。