えんずいの生徒さん2/6
その生徒さんは、M君といった。
ものの名前は理解しているけれど、
抽象的なものの理解が難しいようだった。
例えば、
「円滑 えんかつ」という言葉を学ぶにも、
目で見て、手に取って分かる具体物ではないので
イメージが沸かない。
よってなかなか覚えられなかったという。
おまけに「えんずい」とインプットされてしまったようで。
母は授業の最後にこう聞く。
「じゃあ最後に、今日習った言葉を復習してみましょう。
ものごとが止まったり邪魔されたりしないで、
なめらかに進むことを、何と言ったかな?」
「えんずい! … あっ。」
「えん」までは合っているのに、
「かつ」が「ずい」にすり変わってしまうこのプロセスに、いったい何があるのか…。
教授法に問題があると考えていたnの母は、ある日
TVでアントニオ猪木を見たそうな。
猪木氏の編み出した必殺技が
「えんずい斬り」であることを知った。
教わる側だけでなく
教える側にも日々発見があった模様。