時差、三週間 3/3
お茶目で愉快なマスターのいる居酒屋は、他の飲食店と同様
夕方からの営業である。
昼間。
店先の暖簾と赤ちょうちんは、店の中へしまわれている。
阪神タイガースの旗も、細かい白砂が入った琉球ガラスの瓶も、店内だ。
外からのぞくと、店内はひっそりと薄暗い。
マスターの奥様とお子さん達が家を出て行った話を
旦那さんから聞いて数日後、会社を休んだ日があった。
長女の個人面談があったためである。
時間まで、地元で雑事を片付ける。
まずはママチャリで、食材の買い出しに行こう。
「少し遠いスーパーを開拓してみるかな。」
いつもと違うスーパーへ向かった。
途中、例のマスターのいる居酒屋の前を、偶然通った。
シャッターが下りていた、
ような気がした。
帰り道。
お店の前を通って、再度確認する。
やっぱりシャッターが下りていた。
「開店前って、シャッター下りてたっけな?」
また別の日の週末。
子ども達を公園へ連れていった。
その居酒屋の前を通った先にある公園へ、わざと繰り出す。
シャッターは下りたままだった。
つねに下ろされたシャッターに
マスターのその後の人生が暗示されているようでならない。