時差、三週間 1/3
近所に沖縄の地酒、泡盛を出す居酒屋があった。
まだnがお酒を飲めて、
自由な時間がたくさんあった時代に旦那さんと
数回ほど行ったことがある。
その店のマスターは、
沖縄の三味線、さんしんがとても上手かった。
初めてその店に行った日
n夫婦が結婚式を挙げたばかりだと知ったマスターは、さんしん片手に
沖縄の方言を交えて
即興の歌をプレゼントしてくれた。
ご出身は沖縄ですか?
と聞くと、
どこからともなく阪神タイガースの大旗を持ち出してきて、
六甲おろしを熱唱し始めた。
大阪ですか?と尋ねたら、
「わたし、北のほう。青森よ。」と
わざとコテコテの東北訛りで答える。
お茶目なマスターであった。
そんな彼のもとに集うお客さんは、おもに
沖縄好きの人、
阪神タイガースファンの人、
近所の単に飲んべえな人、
の三タイプで、この三者にあまり共通項は見当たらない。
しかしなぜか
個別飲みが存在しない店だった。
マスターの指揮の下、
「さ~ぁ、みなさんご一緒に!」という
まこと団結力のある居酒屋であった。