けん伯父2/3
がぁこは
車のエンジンの音で、伯父が来たことが分かるのだそう。
私たちが訪れた時も、エンジン音を聞き付けて
岸辺まで泳いできていた。
「なつくとかわいいだろう?」
がぁこは
一羽の水鳥を従えて泳いできた。
伯父によると「しげじ」という名前だそう。
がぁこの旦那さんであるという。
「しげじは餌を食べない。がぁこに遠慮してるんだ。」
伯父の言う通り
しげじの目の前に餌を投げても、しげじは食べない。
がぁこが全部横取りしている。
気の強いがぁこと
つがいになってしまったせいで
昨春は、北へ渡っていけなかった。
そう、しげじは渡り鳥であった。
かるがもの類ではないか、とのこと。
「他の鳥たちが北へ帰っていく中、しげじだけは
この池にとり残されてたんだ。」
帰り道、橋のたもとに車を止めて
遠くから
がぁことしげじを眺める伯父。
手にはバードウォッチング用の双眼鏡を持っている。
この熱心さは
あひるやかるがもが、自分になついてかわいい
という理由だけではないと思う。