盛り塩
先輩が目撃情報を寄せてきた。
「うちの会社のそばで、盛り塩をしている人がいるよ!」
盛り塩 じゃなくて
盛り髪 じゃありませんか?
念のためもう一度聞くと
「髪」ではなく「塩」だと言う。
「よく料亭の玄関脇に置いてあったりする、こんもりした小さな山の塩ですよね。」
「そう、それ。でも小さな山どころじゃないのよ。一キロ位の塩を、ざざーっと盛っているのよね。」
「えっ!どんな人でしょうか?どこでしょうか?」
「おじさんだよ。
あそこに郵便ポストがあるでしょう、その下の植え込みの所よ。」
先輩とnは通勤経路が同じだ。
毎朝、その前を通っている。
「一キロって・・・よほど清めたいんでしょうか。」
「昔あの場所で、何か忌まわしい事件でもあったのかしら?」
「塩は厄除けや魔除けに効く、って言いますものね。」
先輩によると、盛り塩はいつもあるわけではない、とのこと。
ごく最近のことでもなく、少なくとも先輩が入社された時から
塩が盛られている現場を目撃してきたという。
ついこの前も、見かけたそうな。
オフィス街に、家庭用の一キロの塩 という
少々ミスマッチな光景。
気付く人は気付き、
気付かない人は、いつまでたっても気付けない。