福助さん2/2
ある一時、仕事が立て込んでいたので
早めに出勤していた。
そんな頃
いつものように出勤路を歩いていると、背後から
前傾姿勢の自転車が追い抜いていった。
「自転車、やってます!」風の、スタイリッシュなクロスバイク。
駐輪場へ颯爽と停める。
すばやく鍵をかける。
流線型のヘルメットを、リュックにしまう。
この一連の動作をなめらかに行った後、駅改札への階段を弾みながら
降りていった。
福助さんであった。
座布団でかしこまる裃の福助とは違い、
現実の福助さんは、アクティブに動いていた。
当たり前である。
人は動くし、移動する。
「福助さんじゃなかった・・・。」
いっときの外見と様態だけで、人を判断してはならぬ。