neillot’s diary

サラリーマンで三児の母の、はちゃめちゃ感あふれる日常

失せ物2/3

昨日からの続きです。
neillot.hatenablog.com


どこにでもあるちっぽけな指人形でも
無くした本人にとって、ひよこさんは ”亡くした人” なのである。


心にぽっかり穴があく。


n自身も、8歳のとき
とても大切にしていたぬいぐるみを
無くした。

奇しくも長男と同じ、ひよこのぬいぐるみであった。

父の職場である中学校の学園祭に、よせばいいのに
持っていった。

これまたお気に入りのバックに入れて、やめればいいのに
持っていった。


帰りの電車で、当時8歳のnは気付く。

「私、ひよこさん持ってない!」


学園祭の会場のどこかで、バックごと忘れてきたのであった。


子供にありがちな行動パターンである。
自分の大好きなおもちゃを、遠出のお出かけに持っていく。
そしてお約束のように、無くす。


当時はあまりの喪失感に、何をするにもため息ばかりで
沈んだ日々を過ごした。
お部屋の隅に体操座り、のような・・・。


けっこう鮮明に覚えているので、その時の母の言葉も覚えている。


大人の、親の、上目線からの

「だから持っていくなと言ったでしょう。」的なダメ出しや

「だったら次はどうしたらいいの?」的な自己責任ルールの約束

なんて
子供にとって、精神の安定、という点においては
何らの慰めにもならない。


忘れないでほしい。
本人は、”心にぽっかり穴” なのだ。


ひよこさんを無くして以来、
長男はnにすりすり寄ってくることが多くなった。


nの幼少期の苦ーい体験を踏まえて、
いまこそ
長男の心に寄り添ってあげたい。


母の力が、試される。

失せ物1/3

長男が
お気に入りのひよこの指人形を無くした。


出かける前「ひよこさんも持っていっていい?」と聞いてきた。
近所の買い物と、公園で軽く遊んで帰るだけの外出だったので
nはOKした。



帰って来た玄関の前で、長男気付く。
「ひよこさん、いない!」


速攻で来た道を戻った。
どこで落としたのか分からない。


道路、道端の植え込み、公園、雑草の中、駐車場、

怪しいと思われる所を記憶を頼りに
くまなく探す。


寄り道しいしい帰ったことを、恨めしく思った。

さらに
お気に入りのぬいぐるみを持っていって良いと許可した
自分を後悔した。
親として諌めるべきであったろう。


「ぼくが持っていく、なんて言ったからだ…。」

後悔は長男も同様で、がっくりとうなだれている。



末っ子・次男が疲れてきて限界になったので
捜査はいったん切り上げて、帰宅した。



数分後、
地面を血眼になって探す母の姿があった。
(怪しい。)

運悪く雨が降ってきた。構わず捜査は続行した。
(さらに怪しい。)


結局
落としたと思われる道を四往復した。



ひよこさんは、見つからなかった。

心残りなパン屋さん

週末
長女の習い事の付き添いで、広い体育館に行った。


早速リハーサルに入る長女の一行は、コーチに率いられて
体育館へと消えていった。

付き添いの親たちは、残される。

さて。練習が終わるまでの時間、何をしよう??

普段は喉から手が出るほど欲しい
「一人時間。」
いざ一人になれる時間ができると、何をしていいのか戸惑う。


いちおう
待ち時間に読む文庫本は、持ってきた。
が、お昼のお弁当を持って来るのを忘れた。

子どものお弁当を作ることで頭がいっぱいで
自分の分なんて、念頭に無かった。


日常のマイナーなしくじりを、
私以外にもしでかした親御さんがいたようで

「じゃあ、一緒にお昼を買いにいきましょう。」となった。


その方も
三人のお子さんがいらっしゃるママであった。

三人育児のあるある話で盛り上がりながら、最寄りのコンビニ目指して
てくてく歩いてゆく。


広い体育館の敷地内は、やっぱり広い。


やっと着いたコンビニは、閉まっていた。


目的地を失った私たちは、
なおもおしゃべりをしながら目的不明に進む。


いつの間にか敷地内を出ていた。

すると目の前に素敵なパン屋さんが飛び込んできた。

「美味しそうなパン屋さん。ここで買っていきましょうかね!」


実際にそのパン屋さんのパンは、美味しかった。


「雰囲気もよく美味しいお店、私たちの住む地域には見かけないよね。」
「ほんと、土地柄おしゃれなお店が多い。偶然見つけてお得な気分だね。」


「家族に買っていけばよかった。」
「ね。私も一瞬、食パンを一斤買おうと思ったけど、電車で帰ることを考えて
やめちゃった。」

「次来ることなんて、多分無いよね…。」
「うん、おそらくは…。」


名も知らないパン屋さんに偶然入った、いちげんさん二人は
さすがに主婦。

自分たちの昼の分だけ、パンを買ったことに
ちょっぴり後悔した。



それから随分と経ったある日。
ネットで映画のレビューを見ていた。


とあるレビュー写真の一枚に、見覚えのある店が写っていた。

どこかで見たことがあるパン屋さんだぞ。


「あ。」


心残りだった、あの素敵なパン屋さんだった。




主演女優や主演男優が好き、という正当な理由ではなく

撮影場所の一つの
「あのパン屋さんが気になって」という理由も、

映画を見る立派な動機になり得えます。

謎のお屋敷3/3

先日、久しぶりに謎のお屋敷の前を通る機会があった。

この秋から始めた長女の習い事の付き添いで、である。 

 

「そろそろこの辺りに来ると、見えてくるんだったよな。」

 

 しかしお屋敷は、

いつまでたっても見えてこなかった。

 

純和風の邸宅は、跡形もなく消えていた。

笹の葉も竹の外壁も、何もかもない。

 

さら地になっていたのだった。

 

 

今まですっかり忘れ去っていたのに、なんだか悲しかった。

 

 

後になって知ったが

そのお屋敷は、撮影スタジオだった。

 

同じく習い事の付き添いで来ていたママさんが教えてくれた。

 

彼女曰く

この付近には、撮影用の家屋が点在しているという。

 

 

この地に住み、今秋で10年が経つ。

 

地元を知るには

10年という月日は、まだまだ足りないようだ。

謎のお屋敷2/3

昨日からの続きです。


遠巻きに眺めるだけでは、謎はいっこうに解明しない。

ある日の妊婦健診帰りに
謎のお屋敷に接近してみることにした。


正面玄関の前に立つ。

表札は無かった。郵便受けも無かった。

住人の車やバイク、自転車などの乗り物も
いっさい見当たらなかった。


門のドアノブに
「お車は右手裏口へおまわり下さい」と書かれたプラカードが掛かっていた。



家全体は、手入れされている。

が、人が住んでいる気配がしない。生活が営まれている感じがしないのである。



ほどなくして
次男が誕生し、育児休業を終えて仕事に復帰し
日々の忙しい子育てと仕事に追われていくうちに、


その道を通ることも、ぶらぶらと散歩することもなくなった。



お屋敷の存在も、次第に忘れていった。

謎のお屋敷1/3

近所に謎のお屋敷がある。


周辺の家々とは明らかに違う雰囲気で佇み、
そこだけが異空間であった。


「なんだろう、あの家は?」


前を通るたびに、興味をそそられた。
次男の産休中のことである。

そのお屋敷は、妊婦健診を受けに行く道の途中にあった。


茅葺き屋根が、格調高い。

高い外塀は、竹。黒い紐で、隙き間なく編まれている。
外塀の上から笹の葉らしき緑がちらっと見える。


雨戸はいつも閉じていた。

布団や洗濯物、マット類などの生活アイテムが干されていることは、
一度も無かった。


「もしかしたら別荘かもしれない。」

でもこんなベタな地区に建てるだろうか。



憶測の域を出ない想像は、謎に包まれむくむくと膨らんでいった。

序ノ口と横綱

複合機に、原稿が残っていた。ファックス送信状である。
先輩が送ったらしい。



席に戻るついでに手渡した。

先輩:「ありがとう~。
あっ、ヤダ!私、ファックスするつもりがコピーしてたよ。もう、ダメね。」


軽く凹んでいる。


n:「いやいや…忙しいとコピーしたいのにスキャンしちゃう、とかありますよね。」

先輩:「もう、終わってるよ…。」


軽くない、重く凹んでいる。


n:「有給がマイナスになった私に比べれば、終わるばかりか、始まってもいないですよ。」


以前
有給休暇の取得日数を数え間違えて、マイナスになりましたが、
neillot.hatenablog.com



意外なところで同僚たちを励ます手段として、かなりの説得力をもって
活用できる。