neillot’s diary

サラリーマンで三児の母の、はちゃめちゃ感あふれる日常

折り入ったお話

おかしい。
どうもおかしいぞ。


「あのぅ…折り入ってお話があるんですけど…。」


なんていう改まった前置きもなく、妻はいきなり本題に入る。


しかもメールで。旦那さんへ突撃だ。


「あの、遅れているんですよね。まだ来てないんですよ…今日で3日遅れです。」


して、いったい何が遅れているのか。


おそばの出前か、ピザの宅配か?

それともネット注文した、日時指定の「家族の青汁」5パックか?


いずれにしても3日の遅れは、やりすぎだろう。


そもそも、何の話なのか。


三児の父である旦那さんは、すぐにピンときたようだ。


旦:「違うと思うよ。じっさい…もう少し待ってみたら?」

n:「3日遅れているという事実に、恐れおののいているんだよ。」

旦:「残業が続いてるから、遅れてるだけだよ。疲れているんじゃない?」

n:「現実を直視できるのは、私だけですね。」



移動中に交わす夫婦のメールは

相変わらず、かみ合わない。

伯父3

伯父には、彼女がいる。


私達が伯父の家にお邪魔するときは、彼女が
家のお世話をして下さいます。

名前は吉野さん。


掃除の行き届いたお部屋、ふかふかのお布団、
アイロンのきいたシーツに、新しいタオルや石鹸。

冷蔵庫には、食べ物やら飲み物を過不足無く
揃え

子供たちへのおやつも忘れない。

数日前から全て
吉野さんが用意周到に準備して下さるのであった。


手料理までごちそうして下さる。
星野リゾートを上回る、吉野リゾートである。


子連れで騒がしく泊まりにくる私達に
毎回とてもよくして下さります。


元をたどれば、たぶん
伯父のことが好きなのであろう。


伯父の妹であるnの母が、
再婚は考えたりしていないの?と聞くと


「いやー再婚を考えていたら、もうとっくの前にしてるさ。
気が強い女性なんだ。とにかく我が強い。」



朝な夕なに
池に通いつめ熱心にバードウォッチングをする伯父。


かるがものしげじと、やもめの伯父。

あひるのがぁこと、彼女の吉野さん。


水鳥と人間に
共通点が見いだせます。

伯父2

がぁこは
車のエンジンの音で、伯父が来たことが分かるのだそう。

私たちが訪れた時も、エンジン音を聞き付けて
岸辺まで泳いできていた。


「なつくとかわいいだろう?」


がぁこは
一羽の水鳥を従えて泳いできた。

伯父によると「しげじ」という名前だそう。
がぁこの旦那さんであるという。


「しげじは餌を食べない。がぁこに遠慮してるんだ。」


伯父の言う通り
しげじの目の前に餌を投げても、しげじは食べない。
がぁこが全部横取りしている。


気の強いがぁこと
つがいになってしまったせいで
昨春は、北へ渡っていけなかった。


そう、しげじは渡り鳥であった。

かるがもの類ではないか、とのこと。


「他の鳥たちが北へ帰っていく中、しげじだけは
この池にとり残されてたんだ。」


帰り道、橋のたもとに車を止めて
遠くから
がぁことしげじを眺める伯父。

手にはバードウォッチング用の双眼鏡を持っている。


この熱心さは

あひるやかるがもが、自分になついてかわいい
という理由だけではないと思う。

伯父

ひで伯母さんの、だんなさん。

nの母の、お兄さんである。

 

ひで伯母さんが亡くなって、やもめとやった。

 

 

趣味は、バードウォッチング。

 

はて。nが小さかった頃は

バードウォッチングなんてしてたかな?

 

「最近だよ。通ってる池があるんだ。」

 

nが子供たちを連れて伯父の家へ遊びに行った時、

その池に連れていってくれたことがある。

 

 

湖畔には、白鳥とおぼしき水鳥が描かれたプラカードが何枚も重なり

ざらしになっていた。

 

かつては地元のささやかな観光スポットとして

栄えていたという。

 

バードウォッチングのバードとは、この池の

あひるであった。

 

伯父は、そのあひるに「がぁこ」という名前をつけていた。

 

「がぁこは気が強い。餌をやると、他の水鳥たちをみんな蹴散らしてしまう。

独りで全部食べてしまうんだ。」

 

なるほど、がぁこは他のあひるよりも丸々としている。

鳴き声も大きい。だから、がぁこ なのか。

 

 

朝と夕にその池に立ち寄るという伯父。

 

もちろん家から歩いて行ける距離にはなく

車を走らせて、である。

 

 

人気のない寂れた池に

伯父は何を見ているのだろう。

ひで伯母さん3

当時の母は、シャネルのスーツを家着としていた。

 

オートクチュールのスーツが普段着になりうるような家庭ではない。

豪華とは縁のない、どちらかというと質素な家庭だった。

 

母はシャネルスーツの上から、地元スーパー2階の衣料部で買い求めた

「今月のマル秘!お買い得商品 エプロン@789円!」をしめていた。

 

 

スーツは、ひで伯母さんのものだった。

 

チンケなエプロンとの組み合わせでは

ひで伯母さんだけでなく、ココ・シャネルも泣くだろう。

 

 

何故、母は室内だけでスーツを着ていたのか?

 

母のサイズのどこ一つとっても、

全然フィットしていなかったからである。

 

「スーツの上下とも入るのだけど、すべての丈が短いわ。変な所が余ったりして…。」

 

 要は、つんつるてんでブカブカだった。

 

ひで伯母さんは、小柄で全体的にまろやかな感じの方だった。

 

 

着心地の悪いスーツでも

シャネルということで無理矢理にでも着ているのでは?


nの邪推である。

 

 

 女兄弟のいない、nの母。

帰省した折には、暇さえあればひで伯母さんと話し込んでいた。

子どもは入りこめない大人の話を。

 

おしゃべりはいつも決まって長かった。 

 

 

「故人の物は、使ってあげることが一番の供養なんだよ。

ひでちゃんを思い出すことができるから。」

 

nは邪推した自分を恥じた。

 

 

もうすぐ

ひで伯母さんの命日である。

ひで伯母さん2

ひで伯母さんには、子供が二人いる。

 

nのいとこだ。

そのうちの一人が結婚した。数年前である。

 

お相手の方は、明るく朗らかそうな女性であった。

結婚式の写真を見ての第一印象である。

 

 

以来、何かの折に帰省した際には、いとこのお嫁さんに会う。

お食事したり、お茶を飲んだり、おしゃべりしたり。

 

今夏も、会ってきた。

ぱあっと明るい、ヒマワリのような人。

 

 

よく笑う。

 

つぶあんが嫌いで、こしあんが好きだという彼女。

 

ひで伯母さんも 甘いものには目がなかった。

 

いとこのお嫁さんは、

nの記憶の中のひで伯母さんと幾重にも重なる。

ひで伯母さん

nが小さかった頃。
夏休みは、母方の祖父母の家に遊びに行っていた。


そこには祖父母の他に
母の兄である伯父と、ひで伯母さんがいた。
nと歳の近い、いとこもいた。


ひで伯母さんは
いとこより3歳年下のnを、可愛がってくれたように思う。

「nちゃんを見てると、娘の3年前を思い出すわ…。
ちょうどこんな風だったなぁ。」



ヒマワリのように明るい人だった。


親戚家族がみな帰った後も、私達だけは
ひで伯母さんの家に居座っていた。

nが「もっといたい!」とリクエストしたのか、
実家でゆっくりしたいnの母が「もう少しいてもいい?」とnの祖母にお願いしたのか。

毎夏、一週間は泊まっていたと思う。


ひで伯母さんは、働いていた。

まだまだ夏休みを満喫している私達家族がのっそり朝ごはんを食べていると、
夏休みの終わったひで伯母さんは、シャネルのスーツに身を包み
颯爽と会社へ出かけて行った。

「nちゃんたち、ゆっくりしてってね。じゃ、いってきます!」


お盆が終わり会社が始まってからも、なおも居続ける
義理妹の家族。


どう思っていたのだろう。


当時子供だったnは、知る由もない。

現在は、知る術もない。